電池の残量計算(SOC)や寿命診断(SOH)はどうやって計算されているの?
SOC(残量)とSOH(寿命)の計算は、外から測れる情報(電圧、電流、温度)から内部の状態を「推測」する必要があります。イメージしやすく言うと、「バケツの中の水(電気)の量」と「バケツ自体の劣化具合(寿命)」を、水の出し入れの様子や外観から当てるようなものです。具体的にどのような手法が使われているのか、代表的なものを紹介します。
1. 残量計算(SOC: State of Charge)
SOCは、「満充電を100%、完全放電を0%としたとき、今どれくらい電気が残っているか(%)」を表します。主に2つの手法を組み合わせて計算されています。
A. 電流積算法(クーロンカウント法)
蛇口から出た水の量を計るように、流れた電流を時間で足し合わせる方法です。
- 仕組み: 入ってきた電流(充電)と出ていった電流(放電)をひたすら足し引きする。
- メリット: 充電・放電に関わらず、リアルタイムで残量の変化を計算できる。
- デメリット: センサーのわずかな誤差が積み重なり、時間が経つと実際の残量とズレてしまう「ドリフト現象」が起きる。
長時間、満充電や完全放電をしないと、基準となる位置がズレてくる。
B. 電圧測定法(OCV法:Open Circuit Voltage)
電池の電圧(水位)を見て残量を判断する方法です。
- 仕組み: リチウムイオン電池などは、残量(SOC)と開回路電圧(OCV:電流が流れていない安定した状態の電圧)に一定の関係のOCV曲線)があります。
- メリット: 誤差の蓄積がないため、リセット(補正)に使える。
- デメリット(弱点):「安定した状態の電圧」でないと正確に測れない。充放電の直後は電圧が変動しているため、車を数時間停めた後などでないと使えない。
最近の電池(LFP電池など)は、SOCが変化しても電圧があまり変わらない「平坦な特性」を持つため、電圧だけでの判断が難しい。
A+B. カルマンフィルタ(現代の主流)
上記のAとBの「いいとこ取り」をする高度なアルゴリズムです。
- 仕組み: 「電流積算での予測」と「電圧からの推測」をリアルタイムで比較し、統計的に最もらしい値を算出します。
基本的には「電流積算法」でリアルタイムの残量を追い、車が停車して電池が安定したときや、満充電になったときに「電圧測定法」で、積算された誤差をリセット(補正)します。さらに高度なBMSでは、カルマンフィルタなどの数学的手法を用い、電池の内部状態を模したモデルと、実際の測定データを照らし合わせながら、常に最も確からしいSOCを動的に推定しています。
2. 寿命診断(SOH: State of Health)
「新品時と比べてどれくらい劣化したか」を判定する方法です。通常、新品を100%として表します。
A. 満充放電容量による比較
- 仕組み: 「最後に満タンから空まで使ったとき、合計でどれだけの電気(Ah)を取り出せたか」を測定し、新品時の設計容量と比較します。例えば、新品時「60kWh」だったバケツが、劣化して今は「48kWh」しか入らなければ、SOHは80%となります。
B. 内部抵抗の測定
電池は劣化すると、内部の抵抗値が上がり電気が通りにくくなります。バケツの蛇口が詰まってくるようなイメージです。
- 仕組み: 負荷をかけた瞬間の電圧の落ち込み(電圧降下)を見て、内部抵抗Rを算出します。
内部抵抗が上がると、同じ容量の電気があっても、取り出せる電力が減ったり、充電時間が長くなったり、熱を持ちやすくなったりします。
SOCとSOHの関係(まとめ)
| 指標 | 何を表す? | 測定・計算のイメージ | 主な測定データ | 難しさ |
| SOC | 今の残量(%) | バケツの水量 | 電流・電圧 | 電流センサーの誤差蓄積と、電圧安定待ちの両立 |
| SOH | 健全度・寿命(%) | バケツの劣化・縮み | 充放電量・内部抵抗 | 日々の長期的データからの総合的な推定 |
💡 豆知識:なぜ「急に10%から0%に落ちる」ことがあるのか?
これはSOH(寿命)の計算がズレている時に起こります。BMSが「まだこれくらい容量があるはずだ」と予測してSOCを表示していたのに、実際の電圧が急降下して「あ、実はもう空っぽだった!」と慌てて表示を修正するため、あの絶望的なジャンプが起こります。
