📘8Dレポートとは?

8 Disciplines(8つの手順)に沿って、発生した不具合の原因を分析し、再発防止まで体系的にまとめるための報告書です。

顧客への回答や社内の情報共有、技術伝承などにも活用されます。
「不具合が起きた → 直す」だけでなく、
「なぜ起きたのか → 二度と起きないようにする」までをきっちり追求するためのツールです。

8Dのステップ内容

問題解決のプロセスは、通常以下の8つのステップで構成されます(詳細な名称やステップ数は組織により異なる場合があります)。

※このプロセスを始める前に「D0: 計画と準備」を設ける場合もあります。

項目内容工場での具体例
D1: チームの結成問題解決チームをつくる品質・製造・設備・設計などの担当者でチーム化
D2: 問題の明確化どんな問題が起きたのかを定義
5W2H(Who, What, Where, When, Why, How, How Many)
「製品Aのねじが緩む」「歩留まりが○%低下」など具体的に記載
D3: 暫定対策(Containment Action)問題拡大を防ぐ応急処置不良品を隔離・全数検査など
D4: 根本原因の特定なぜ起きたかを分析(なぜなぜ分析、特性要因図など)「トルク管理の手順が不明確」「作業者教育不足」など
D5: 恒久対策の策定と検証根本原因を無くす対策を考え、実施前にその効果と悪影響がないかを検証します。「トルクレンチの自動記録化」「教育手順書の改訂」など
D6: 是正処置の実施恒久対策を現場に導入し、問題が完全に解決したことを確認します。手順書改訂・設備改造・教育実施など
D7: 再発防止の標準化同種の問題が二度と発生しないように、関連する手順書や設計、教育などを標準化・仕組み化します。管理基準やFMEAの更新、標準化など
D8: チームの称賛・評価対策完了とチーム評価し、学んだ教訓を組織全体で共有して活動を終了します。報告書提出・学びの共有・表彰など

🏭 工場での使われ方

工場や製造業では、製品の品質保証継続的な改善の活動において、8Dレポートは非常に重要なツールとして使われます。

  • 品質不良やクレーム対応: 顧客から製品の不具合についてクレームを受けた際、その調査結果と対策を体系的に報告するために使われます。
  • 組織的な問題解決: 個人の経験や勘に頼るのではなく、チームで論理的・構造的に問題に取り組み、対策の抜け漏れを防ぎます。
  • 知識の蓄積: 過去の問題解決プロセスと結果を記録することで、将来の製品開発や工程設計に活かすための技術や教訓を組織内に蓄積します。

✏️ まとめると

  • 工場や製造業で使う「問題解決レポート」
  • 不具合の原因追求から再発防止までを体系的にまとめる
  • 顧客対応・内部品質改善の両方で使われる

ねじ緩み対策のための8Dレポート(テンプレート)

【チーム名】 緩み対策
【メンバー】 生産技術、製造(組立)、品質保証、設計部門の各担当者(部門横断的なメンバーで編成)
【役割】 リーダー:生産技術(原因究明と対策立案を主導)
【発生事象】 A製品の特定部品(Bブラケット)を固定するM6ボルトが、出荷後の初期使用期間(稼働300時間以内)に緩む事象が顧客から報告された。
【5W1H】 What: M6ボルトの緩み。 Where: 組立工程Cライン、および顧客使用環境。 When: 2025年10月以降の製造ロット。 How: 振動や熱サイクルにより徐々に緩む。 How Many: 報告件数は〇件。 Who: 顧客。
【実行内容】
1. 現在庫および出荷済み製品に対し、当該ボルトの増し締めを緊急実施(特定のトルク値にて)。
2. CラインでのM6ボルト締付け作業に対し、全数チェックリストダブルチェックを導入し、締付けトルクの不足を一時的に防止。
3. 顧客に対し、暫定的な増し締め手順を提供し、緩みが発生した場合の対処を案内。
【分析手法】 なぜなぜ分析、FTA(故障の木解析)、締付けトルクデータ分析
【判明した根本原因】
1. 設計上の課題: 締結部の剛性が低く、熱サイクルによる部材の収縮差が大きい構造であったため、初期締付け力が早期に低下した(陥没緩み)。
2. 製造上の課題: 締付け治具の経年劣化により、規定トルク値が実際には出ていないロットが混入していた(締付け力不足)。
【決定した対策】
1. 設計変更: ボルトをセルフロック機能付き(ゆるみ止め効果のある)ナットへ変更。
2. 製造変更: 締付け機を新型のトルク・角度管理付きの電動ドライバに更新し、管理値を再設定。
3. 締付け力の検証: 新しい締結方法とドライバで締付けたサンプルを振動試験にかけ、緩みが発生しないことを検証。
【実行内容】
1. 恒久対策が完了したライン(Dライン)にて、製品の製造を開始。
2. 新しい締付け方法の作業手順書を改訂し、全作業員に対して再教育を実施。
3. 新方法で製造した製品を一定期間モニタリングし、顧客からの緩み報告がゼロであることを確認。
【標準化内容】
1. 設計標準の改訂: 振動・熱サイクルが発生する締結箇所には、原則としてゆるみ止め部品の使用を義務付ける設計標準を策定。
2. 設備保全の標準化: 締付け機の定期的なトルク校正と点検を、予防保全計画に組み込み、製造標準書に追記。
3. 他製品への水平展開: 類似構造を持つ他製品の締結箇所も点検し、必要に応じてD5の対策を適用。
【総括】
対策チームの迅速な対応により、顧客クレームの発生を抑制し、恒久対策により品質が向上した。
本件を通じて得られた「陥没緩み」と「締付け設備管理」に関する教訓を、全社的な品質教育に組み込む。

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