ベンチャー企業面接で社長面接がなかったお話。

中途採用でベンチャー企業

ベンチャー企業の面接プロセスには独特の雰囲気があるとよく耳にしますが、私の場合、特に印象的だったのは「社長面接」がなかったことです。私が今勤めている会社は、現在そこそこの規模に成長しているが、私が入社した当時はまだ社員数が30人程度の中堅ベンチャーだった。それでも先輩社員の話によると、社員が10人程度の本当に初期の段階では、社長自らが自らのビジョンに共感し、会社を一緒に育ててくれる人材を厳選したいという思いが強く、面接というより自分のビジョンを話すことでその「フィット感」を確かめていたらしい。確かに、10人規模ともなれば、一人ひとりの影響力が大きく、社長が「この人と一緒に働けるか」を自分の目で判断したい気持ちも分かる。ところが、社員数がそれを超えてくると、どうやら状況が変わってくるようだ。会社が成長し、採用の頻度が増えたり、業務が分担されたりするにつれて、社長がすべての面接に関わるのは現実的ではなくなる。組織が拡大すれば、社長の時間は経営戦略や資金調達、外部との交渉などに割かれ、採用業務は人事チームやマネージャーに委ねられるのだろう。

私の場合、入社前の面接プロセスは3回あったが、業務内容やスキルについての質問が中心で具体的なプロジェクトやチームとの相性を見られている感じがした。そして最終面接で社長が出てくるのかと少し緊張していたのだが、いままで話をしたことあるメンバーだけで入社後のキャリアパスについてかなり現実的な話をするのみで、「社長なしで、もう組織としてしっかり回ってるんだな」と感じたのを覚えています。

とはいえ、社長面接がないことに少しだけ物足りなさを感じたのも事実です。ベンチャー企業って、やっぱり創業者の情熱や個性が色濃く反映される場所じゃないかと思います。そのため、そのトップに直接会って、「この人のために働きたい!」とか「このビジョンに命をかけたい!」と思える瞬間があるのかなと、ちょっと期待していた部分もありました。でも現実には、そんなドラマチックな展開はなく、淡々とプロセスが進んで内定が出た。入社後に社長と会う機会はあったけれど、それはもう採用が決まった後の話で、面接とは全然違う空気だった。

振り返ってみると、社長面接の有無って、企業のフェーズを映し出しているかもしれない。今となっては、社長面接がなくても、自分がこの会社で働けていることに満足しているし、成長する組織の一員として貢献できている実感もある。後日、社長とじっくり話す機会があったときに、「あの時、面接で会えなかった分、今しっかりビジョン聞かせてください」と笑いながら話せるのもベンチャー企業ならでは経験でした。