中国の絶縁手袋から見る電圧基準
中国市場で流通している絶縁手袋には、12kV、25kV、35kVといった表記がされていることがよくあります。これらの数字は、どのような基準に基づいているのでしょうか?この記事では、中国における電力システムの標準電圧や絶縁手袋の規格を調査し、さらに日本の規格との比較を通してその背景を探っていきます。
1.中国の電力:GB/T 156-2017「標準電圧」
中国の電力系統は周波数50Hzで、国家標準「GB/T 156-2017 標準電圧」に基づいて構成されています。主に以下の電圧レベルが用いられています。
- 220V~1000V
- 単相:220V
- 三相:380V
- 1kV~35kV
- 3kV、6kV、10kV、20kV、35kV
- 35kV~220kV
- 66kV、110kV、220kV
これらの電圧レベルに合わせて、使用される電力機器や保護具(絶縁手袋など)も区分されています。
2. 中国の電気安全基準:GB/T 17622-2008「絶縁手袋の技術要求」
中国で使用される絶縁手袋の技術基準は、絶縁手袋が活線作業に使用されることを前提に、各等級ごとに以下のような性能指標が設定されています。
電気絶縁性能指標
等級 | 名称 | 試験検証電圧 (V) | 最大使用電圧 (V) | 最大漏れ電流 (mA) |
---|---|---|---|---|
0 | 5kV 補助作業用絶縁手袋 | 5000 | 380 | ≤16 |
1 | 10kV 補助作業用絶縁手袋 | 10000 | 3000 | ≤18 |
2 | 20kV 補助作業用絶縁手袋 | 20000 | 10000 | ≤20 |
2 | 25kV 補助作業用絶縁手袋 | 25000 | 21750 | ≤21 |
3 | 30kV 補助作業用絶縁手袋 | 30000 | 26000 | ≤22 |
3 | 35kV 補助作業用絶縁手袋 | 35000 | 31250 | ≤22 |
4 | 40kV 補助作業用絶縁手袋 | 40000 | 35000 | ≤24 |
ここで注意すべきは、等級名称(例:25kV)は試験電圧を指しており、実際の最大使用電圧とは異なるという点です。たとえば、25kV手袋は21.75kVまでの活線作業に使用可能ですが、20kVを超える電圧レベルでの使用にはリスクがあるとされます。
⚡元データ
https://detail.1688.com/offer/570750285267.html?spm=a261b.2187593.0.0.30926607eFuHQ1



3.IEC規格 IEC 60903:2014
国際規格の「IEC 60903:2014」により、Class(クラス)によって分類されており、各クラスは使用できる最大電圧に応じて定義されています。
Class(クラス) | 最大使用電圧(AC) | 最大使用電圧(DC) | 厚さの目安(mm) |
---|---|---|---|
00 | 500 V | 750 V | 0.5~1.0 |
0 | 1,000 V | 1,500 V | 1.0~1.5 |
1 | 7,500 V | 11,250 V | 1.5~2.5 |
2 | 17,000 V | 25,500 V | 2.3~3.6 |
3 | 26,500 V | 39,750 V | 2.9~4.2 |
4 | 36,000 V | 54,000 V | 3.6~4.8 |
4.日本の絶縁手袋:JIS T8112 2014
日本では「JIS T8112:2014」により、7,000V以下の電気回路作業に使用する絶縁手袋の規格が定められています。2014年の改正により、旧来のA種・B種・C種分類から、以下のような4クラス制に変更されました。
クラス | 最大使用電圧 | 試験電圧 | 厚さ(mm) | 材料 |
J00 | 交流又は直流300V | 交流1,000V/1分間 | 0.2~2.0 | 加硫ゴム、エラストマー、プラスチック |
J0 | 交流600V又は直流750V | 交流3,000V/1分間 | 0.4~2.0 | |
J01 | 交流又は直流3,500V | 交流12,000V/1分間 | 1.0~1.9 | |
J1 | 交流又は直流7,000V | 交流20,000V/1分間 | 1.1~2.7 |
日本ではIEC規格に近い構成であり、定格電圧と試験電圧の関係性が明確で、使用環境に応じた適切な選定が行いやすい設計となっています。
まとめ
中国の絶縁手袋に記載されている12kVや25kVといった値は、試験電圧に基づく等級であり、必ずしも実際に使用可能な電圧ではありません。安全な使用のためには、最大使用電圧に基づいて手袋を選定することが不可欠です。また、中国では色や素材に関する標準が一部曖昧であるので国際規格との整合性や、作業現場の実情を踏まえた製品選び必要です。